ピアニカ修理

飛行機に乗ると歯が痛くなるらしい、という噂にびびって、アメリカに行く前に急ピッチで歯を治療している。週2ペースだ。わたしはとにかく歯医者がキライで、さぼっていたらいつのまにか歯はタイヘンなことになっていたようだ。口を開けたととたんに麻酔を打たれ、ボーッとしていたらいつの間にか大手術がはじまっている。「先生、血が止まりません」とか助手の人が言って、歯にレーザー光線を当てられ、痛くないはずだけど恐怖のあまり泣いた。でも、なんとか出発までには直りそう。社長に紹介されて行っている今の歯医者はたぶん生まれも育ちも日本橋の江戸っ子で、口調がさっぱりしていてかっこいいし、歯の治療を怠ったことについて説教したりしないし(それが嫌でいつも行きたくないのだ)、おまけに値段もおどろくほど安い。でも歯医者はやっぱり嫌いだけど。
で、自分の修理に忙しいのにここに来てピアニカも壊れてしまった。ファの音が出なくなってしまったのだ。楽器屋さんから修理に出したら間に合いそうにないので、鈴木楽器東京支社に電話して、「アメリカツアーに間に合わないんです。なんとかしてください」と仰々しく言ったら、持って来たらその場で直してくれるとのこと。池袋にある鈴木楽器へ。池袋っていっても、雑司ヶ谷でむかしアルバイトしていた出版社の近くだった。懐かしい。中に入るといかにもピアニカ一筋といった感じの愛想も何もないおじさんが、自分専用に吹き口を手に持って出て来て念入りに直してくれた。受付にあるキーボードマガジンを読みながら待つ。前はこんな雑誌誰が読むのかと思ったけど意外におもしろい。「プロが選ぶこの音」の特集オルガンのドローバーの数値などをメモしてみる。それから大正琴の業界誌みたいなのもパラパラめくる。その間、「××さん、全日本リード愛好会の方からお電話です」などという声がオフィスから聞こえてくる。一体どんな団体だ。
大体一時間で修理完了。最初「買ってから一年もたたないうちに壊れたからタダにしてくれ」とか言ってみようと思っていたが必死で直すおじさんの姿を見てたらそんなことを言う気にはならなかった。「これからもがんばってください」と激励までされて帰る。どうせ新品買っても7000円だから買い直してもいいやと思ったけど、修理してもらってよかった。