女がフェミニストを嫌いって言っちゃうのはまずい

さいきん、るんさんはわたしに会うたびに「ますださん、編集者の知り合いを集めていつか『青踏』を作りましょう!」と勢いよく言ってくる。どうやらその「編集者」の中にはわたしも含まれているらしく、粟生さんのようなちゃんとした編集者とわたしのような単なる雑用係(企画などはやらない編集アシスタント)を一緒にしてもらっちゃー困るなーと思い、常にあいまいな返事をしてしまうんだけど、それ以外にも、なぜ、「やろうよ」と言えないのかと言ったら『青踏』ってことはるんさんはフェミニスト雑誌を作ろうとしてるからなのだということに気づいた。そんなるんさんの父上の内田某氏はフェミニストが嫌いだと公言してる。なんでかっていうと、フェミニストは「正義のひと」だからで、「私は正義のひとである」と堅く信じてみじんも疑わない人は決して自分の間違いを認めないし、自分が弱者であるというのを理由にとにかく何でもかんでも怒っているからうっとおしい、というのが理由らしい(誤読してたらすいません)。それはごもっとも、わたしもそう思うよ、とついフェミニスト嫌いの方にうんうんとうなづいてしまいそうになるが、こういう正しいおじさんの意見に女が同調しちゃうのはやっぱりまずいんじゃないかなー、と思いなおす。だいぶ違うけど、例えば、大勢でいるときにある男性が、女性を貶めるような下ネタや、共通の女性の知人についての性的な話など一般的に女性が嫌がるような話をした際に、妙にものわかりよく話に加わる女というのが集団の中には必ずいて、そういう人に対する違和感と同じようなものを、女性のフェミニスト嫌いの人にはなんとなく感じてしまう。
大学では何回か女性学のような講義を受けたけど、それで啓蒙されてバリバリのフェミニストになったという人をわたしは知らない。やっぱり時代の流れで、さいきんの若者は自分が正しいとがんばって主張することよりも、多少セクハラを受けてもてきとうに受け流してたくさんの人にもてたいっていうのが特にわたしの同世代には多い感覚ではないだろうか。バンドの世界はものすごい男社会なので嫌な思いをすることはけっこうある。周りの人の話を聞いていてもそういうことは多いみたい。でも、ストーカーにあったり、セクハラにあったりしても皆びっくりするくらい泣き寝入りだ。大騒ぎしたくないし、できないんだと思う。個人的には男女平等とかにはあんまり興味がないのだけど、女であることが理由に嫌な目に遭うっていうのは絶対に許せないのでそういう点においてはわたしはフェミニストだ。だからこれまで嫌なことは嫌だと声高に言ってきたし、男性の意見にも平気で「それってどうなの?」とか「わたしはそうは思わない」とか言ってしまうので、モテとは無縁でむしろ煙たがられることの方が多いんだけど、それでも「わたしはフェミニストです」とは公言できないなー、と思う。男からみたらそういう人ちょっときついでしょ、と思っちゃうので。それなのにるんさんは堂々とフェミニストで、雑誌まで作ると言っているのでよく考えてみたらなんだか頼もしく、すごいなーと思ってしまった。むやみに怒ったり権利を叫ぶのは向いてないしやりたくないし、『青踏』は作んないと思うけど、るんさんに習って今時めずらしくフェミニストを公言してみようかしら、とちょっとだけ思ったのであった。