何もない日

印刷所に寄って直帰したので、ほんとうにひさしぶりに明るいうちに家に帰ってきた。もう夏みたいだ。印刷所のある西日暮里はあいかわらず治安が悪そうな様子で、新世界ブリッジの近くみたいだと思った。(この間なんか、わたしが印刷所に寄った数時間後に、西日暮里駅で窃盗団が催涙スプレーを撒いたのだった。)今日もかわらず座って、あるいは寝転がって酒を飲んでるおじさんおじいさんがいっぱいいるから、ぶつからないように、そしてMAXに不機嫌そうな顔にして早足でいつも歩いて通り過ぎているけどこの町のことは本当はあんまり嫌いではない。
高校の同級生のMさんからひさしぶりに電話。この前、わたしが皆に会ったのは2、3年前でその時は無職でニートの人が多かったが、今は全員、がんばってなんとか仕事しているらしい。噂に聞くように景気が少しよくなったのだろうかと思っていたらHさんから電話。バッファローが住んでいる「金のマサカリ」の会場だった廃工場はもうすぐ取り壊されて、あいつはまた家がなくなっちゃうらしい。Hさんも仕事をやめるそうだ。じゃみへんも今家がない。無力無善寺界隈の人達にはあいかわらず吹雪のように世間の冷たい風が吹き荒れているようだ。こないだ京都でも思ったけど、やっぱり東京は地方とくらべ断然、殺伐としてると思う。わたしたちよりひとまわり上の音楽をやっている知り合いたちはだんだん東京に住めなくなって、中央線を西へ西へとうつり住み、とうとう関西などに移住してしまっているけど、わたしらの世代もそういう人がそろそろあらわれるかもしれないと思った。
白石かずこ「黒い羊の物語」を読んだら、放浪しているさまがなんだか皆とかぶるように思った。