音楽を聞く

暑くなってきたから通勤の時にボブ・マーリーばかり聞いているのだけど、こないだの朝、地下鉄に乗ってCDウォークマンのスイッチを入れても一向に音が聞こえず、おかしいなと思ってどんどんボリュームを上げるのだけど、かすかにしか聞こえない。電池が切れかかっているのかなと思いつつ、さらにボリュームを上げると聞こえるようになってきたんだけど、他の乗客の視線がなんだかこっちを向いている気がする。それでふと肩のあたりを見たら、CDウォークマンのイヤホンが耳に刺さっていなかった。つまり外に音が全部聴こえていたのでした。東西線の車両に鳴り響くボブ・マーリーアンドザ・ウェーラーズ。あー恥ずかしかった!朝からボブ・マーリーを聞くとものすごーく仕事に行きたくなくなる。でも聞いている間だけ暑いのが気にならなくて、もっと暑くなればいいとすら思う。不思議。
20代前半の頃はできるぶって、あるいはいきがって外人の評論(もちろん翻訳)を読むことが多かったのだけど、最近は専ら中村光夫にはまっている。です、ます調がとてもいいんだよね。「二葉亭四迷伝」を今読んでいる。
今から数年前、大学院に入った時は、わたしは文学の研究者になりたかった。それで、最初はがんばっていてブイブイいわせていて、その時は皆チヤホヤチヤホヤしてきてわーいという感じだったみたいで、天狗になっていたのか、その後いろいろとつまらないことや嫌なこと、それから、根本的に考え方が違ってもめるようなことが山ほどあって、ゼミに行かなく(行けなく)なってしまったのだった。先生とケンカしたわたしに対してゼミの皆の反応といえば「ゆきちゃん、ゆきちゃん」と言っていた人が「ますださん」と呼んだり、「先生のいる時には俺に話し掛けないでくれ」と言ったりと、掌を返したような冷たい態度になって、あの時は心底がっかりしたのだった。もちろんテンパって被害妄想気味だった面もあると思うけど、でも、態度を全然変えなかった人は一人しかいなかった。で、前振りが長かったけど二葉亭四迷の「浮雲」をその頃わたしは何度も何度も読んで、共感していたのだった。暗いなあと思うけどこの作家への思い入れはそういうわけで強い。そんな時にはテクスト論なんてどうでもいい、どんな人だったのか、細かいエピソードを多々もりこみながら熱く論じて欲しい、そんなわたしのニーズにばっちり応え、中村光夫が思い入れたっぷりにですます調で語り、なんだかこゆくて重い読書体験をしている。休み休み読もうと思う。