らも
中島らもの奥さんが書いた「らも」という本を読む。最近、中島らもが自身の躁鬱やアル中について書いた「心が雨漏りする日には」を読んだらおもしろかったので、奥さんサイドからの話も読んでみたかったのだ。中島らもは文章のプロだから、躁鬱病の話も笑えるエンターテイメントとして書かれているけど、「らも」の方はずっとずっと重い話だ。DVとか、愛人との戦いとか、特に後半はヘビーで、読んでて心底暗い気分になる。愛人の実家に引っ越してしまったらもをずっと待ってたりとか、ほんと信じられないけど、結局らもは妻のもとに戻ってきたからまあ、そういうもんなんでしょうね。わたしはこういうドロドロした関係は絶対嫌だなあ。
でも、前半らもと知り合うまでの話は生き生きしててほんとにおもしろい。らもの奥さんはすごい資産家の娘で、遠足の行き先になるくらいの大きな森が家の庭で、その中でノビノビ育ったらしい。服は全部オーダーメイド。しかし、お父さんとお母さんはその資産を管理することができなくて、お金を湯水のように使って暮らしてたら、家はみるみると没落してしまい、最後には何も残らない。まるでうちのお母さんの実家と同じだと思った。ミニチュア版だけど。
コドモの頃、おばあちゃんちに遊びに行くとき、タクシーを降りてから家に着くまでやたら遠かった。門から家までがすごく遠いのだ。母の実家は神社で、結婚式場もやっていた。家の裏には竹藪があったし、家の隣には梅林と畑があって、家の前は大きな空き地だった。母が子供の頃は、買い物といえば東京のデパートに行くか、家に直接店の人が来たらしい。着物なんかは全部呉服屋が家に来て作っていた。わたしのひな人形を買う時にはまだ家は没落してなかったので、おばあちゃんちの大広間にたくさんのひな人形が並べられてそこから一つ選んで買った。それから、週に一回、源氏物語の講義に来る人が雇われていたらしい。
普通のサラリーマンと結婚したお母さんはやりくり大変だっただろうなと思う。おじいちゃんもおばあちゃんも亡くなって今は母の実家の家も土地もなくなって、母は自分のことを「みなしご毒蜂」と言ってるし、その娘のわたしに至っては、お嬢様とはほど遠い、もうほとんど野生化してるので、おじいちゃんも草場の影で泣いてるだろうな。
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